ペンタックスの名機でSPという一眼レフがあります。
スタイリングもいいですし、何と言っても世界初のTTL露出計を内蔵しているなかなかいいカメラなんです。
ちなみにですが、TTLと言うのは、カメラのレンズを通した光を測光する方式のこと。
ですのでレンズを交換してもそのレンズに合った測光が行われるわけです。
ところで今回の話は、そのSPの修理なんですが、
尾道の観光に来たカメラ女子が、動かなくなったと言って持ち込んだものなのです。
多分どこかのギアが引っかかっているような、簡単なことだろうと思ってちょっとその場でバラしてみたのですが、
うーん、これはちょっと時間かかりそう。
どうもこのあたりが怪しいのですが。
すぐには直らないということをカメラ女子に伝えて、直ったら送りますということで送り先を聞いて預かることにしました。
症状はというと、巻き上げレバーはほぼ巻き上がった位置で動かない、シャッターも切れないという状態。
押しても引いても動きません。
ということでバラしていきます。
まずは、シャッタースピードダイヤルとその周辺を。
ここまでバラして、隙間からギアの動きなど見てみるものの、さっぱり復旧する気配がありませんね。
仕方ないので続いてバラします。
巻き上げ関係も外して、
しかしバネが掛かっていますので気をつけて。
バネが戻って飛んで行くこともあります。
そして、矢印の部品を外しますが、この部品自体が軸受にもなっていますので、バラし方と組み方を確認しながら外しましょう。
外したからと言ってぐちゃぐちゃになってしまうわけではありませんのでご心配なく。
かと言って外す時はゆっくり慎重に。
外した状態がこちら。
それでも分かりませんね。
真ん中の大きい黒いギアにかかっている、左側の小さい銀色の2つのギアが、シャッター幕の巻取り軸。
状態を見てみると、ほぼ巻き上がった状態なんですが、何故かシャッターが切れない。
仕方がないので、これらのギアは分解せずに、シャッターセットを一旦解除しましょう。
このギアの噛み方がズレてしまうと、シャッターセットがうまく行かなくなりますので、なるべく外さないようにと。
一旦解除したものを手動でギアを回してセットしてみるんですが、特におかしいところも見えてきません。
仕方がない。
組み直して再発しないか確認しましょう。
と、その前に、
プリズムの周囲のモルトが朽ちていますので、これを取り除いて新しくきれいなものを貼りましょう。
が、
はがしかけると、プリズムの黒い塗装が一緒にはげてきますね。
塗装に癒着してしまっているようです。
無理にはがすとメッキも取れてしまって、ファインダーに黒い線が出てきてしまう可能性があります。
ですのでここは諦めて、できるだけ朽ちた部分を取り除くに留めましょう。
これでファインダーのゴミはなくなるはずです。
ということで組み直して動作を見てみます。
あれ、普通に動いてますね。
うーん、どうしたんでしょうね。
と思いながら何度も何度も巻き上げてシャッター切ってを、繰り返してみます。
するとですね、何回かに一回、巻き上げでのシャッターセットに失敗することがあるんです。
もう一回少し余分に巻き上げればちゃんとセットされるんですが、時々やっぱりセットできないことがありますね。
もしかすると、このあたりが動かなくなる原因なのかもしれません。
軍艦部カバーを外した状態で、巻き上げ操作を繰り返して観察してみましょう。
するとどうやら、巻き上げの逆回転防止機構がほんの少し動きが悪いような感じ。
ではこの辺をもう一度バラしてよく様子を見てみましょうか。
ん? ああ、これかも。
矢印の巻き上げの逆回転防止機構の部品を外しますと、
その裏。
すいません、写真撮ってないので、図で説明します。
逆回り防止の爪が2本あって、それを押さえるうようにスプリングがついています。
上の図はそれを模式的に表したもの。
矢印の黄色いのがスプリング。
これがですね、片方外れていました。
どうやらこれで、巻き上げの最後のほんの少しの角度にズレが出て、
巻き上げが完了しないことが起こっているんでしょう。
そしてその角度によって、たまたまこの部品がはまり込んで、巻き上げが全く動かなくなっていたというのが、今回の症状ではないでしょうか。
ではこのスプリングを正規の状態に掛け直して、もう一度組み直してみましょう。
では巻き上げてみます。
おお、シャッターセットが軽快に正確にできるようになりましたね。
ミスは全く起こりません。
よかったよかった、直った。
少し悦に入ってから、カメラ女子に送り返してあげましょう。