天敵がいない生物が、本来あるはずの機能がなくなってくるということは時々あります。
例えばヤンバルクイナも、捕食する肉食獣がいませんでしたので、飛ぶ必要がなくなり、羽が退化したと考えられます。
と言うことで
前回の続き。
絞り羽根が1枚足りない35mm,F1.8
もちろん退化したわけではなく、これまでの修理の過程で紛失したのでしょうか。
かと言ってスペア部品もなかなか見つかりませんので、ここは作ってみるという方向で行ってみますか?
まずはピンの軸径を測定してみます。
1.33mmですか。
これはなかなか微妙な寸法ですね。
導線が軸に使えると思ったんですが、一番近いサイズが1.2mmですね。
0.13mmの差が、どのぐらい影響しますか。
しかし一番の問題は絞り羽根本体です。
他の部品取りした絞り羽根を成形して使ってみようかと思ったのですが、細かい成形が難しいですね。
絞り羽根はバネ鋼になっていますので、加工していると折れてしまいます。
特に穴を開けようとすると円になってくれません。
他にいい素材はないでしょうかとストックの部品を探していましたら、
これが行けるかも。
これは樹脂製の薄板です。
なんのカメラに使われていたのかは分かりませんが、これなら加工が容易ですし、板自体の強度も大丈夫でしょう。
ただ問題は、ピンの部分に強度を出せるかどうか。
開放測光の一眼レフ用のレンズでは有りませんので、高速で絞りが動くことも有りませんから、普通の動作での強度が出せればいいのですけど。
とりあえず切り出して、ピンの部分に1.2mmの導線を使って、作ってみましょう。
それを仮組みしてみます。
おお、なんか行けそうな気がしてきた。
ピンの部分に強度を出すために、少し焼いてみます。
ハンダゴテで導線を加熱して、ピンのまわりの樹脂を密着させてみました。
刺しただけより随分しっかり止まりましたが、それでも元の部品ほどの強度はないでしょうね。
しかしそこはオーナーさんに了解して頂いて、この方法で追い込んでいきましょう。
焼き留して、ある程度強度が出ましたので、組み直して動作を見てみましょう。
おお、なかなかいい感じ。
が、しかし、
開放から、5.6までは形がいいのですが、それ以上絞ると少し形が崩れてきますね。
しかし微妙なズレですからね。
どうやって直しましょうか。
とりあえず今回作ったものは予備として置いておいて、新たにもう1個作ってそれで追い込んでみましょう。
焼き留した時に、樹脂部分が柔らかくなりますので、その性質を利用して、0点何ミリかの調整ができるかもしれません。
しかし微妙。
あんまりやり過ぎても樹脂が焼けてしまうかもしれませんし…
位置を直しては組んで動作確認の繰り返しです。
だんだんコツは掴めてみましたよ。
これでどうですかね?
絞ってもいい形になってきました。
うん、ほんの少し形がズレることはありますが、ほぼいい感じで円形が作られるようになったと思います。
これでどうでしょうね。
オーナーさんに納得して頂けるといいのですけど。